ニュートロ シュプレモ グレインフリー ドッグフードはいぬわーんで高評価の4つ星を獲得しました。
評価:
ニュートロ シュプレモ グレインフリー ドッグフードは全部で4種類あります。以下はその4種類と評価をまとめた表になります。表の成長段階に書いてある記号はそれぞれの頭文字を取ったもので【G=子犬、M=成犬・老犬、A=オールステージ、U=不明】の意味があります。
また、ここでは4種類を代表してニュートロ シュプレモ 草原のレシピを批評していきますが、他の種類の批評が見たい場合は表中の内部リンクを利用してください。
製品 | 評価 | 成長段階 |
ニュートロ シュプレモ 湖畔のレシピ | 4 | M |
ニュートロ シュプレモ 草原のレシピ | 4 | M |
ニュートロ シュプレモ 地中海のレシピ | 4 | M |
ニュートロ シュプレモ 牧場のレシピ | 4 | M |
原材料とラベルの分析
ドッグフードを選ぶ際には原材料に書かれた上から最初の10品目を見てください。原材料の表示は原則、重量順です。つまり、最初に書いてあるものがもっとも含有量が多いのです。
原材料:チキン(肉)、チキンミール、エンドウ豆、ラムミール、乾燥ポテト、レンズ豆、鶏脂*、タンパク加水分解物、ポテトでん粉、ニンジン、ヒヨコ豆、エンドウタンパク、亜麻仁、乾燥チコリー繊維、ひまわり油*、バジル、パセリ、オレガノ、タイム、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、D3、E、コリン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸)、ミネラル類(カリウム、クロライド、セレン、ナトリウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅)、アミノ酸類(メチオニン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、クエン酸)*ミックストコフェロールで保存
赤字は物議をかもします。
粗灰分=11%以下, 粗繊維=4%以下 (推定乾物繊維量=4.4%), 水分=10%以下
測定方法 | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 |
保証分析値 | 36%以上 | 16%以上 | NA |
乾物基準 | 33.3% | 17.8% | 36.6% |
熱量基準 | 31% | 40% | 30% |
このドッグフードの最初と2番目の原材料はチキン(肉)、チキンミールです。
最初のチキン(肉)は生肉です。これは何か分かると思います。2番目のチキンミールは食用部分を取り除いた後に残る肉片や脂身を高温・高圧下して油脂を抽出したのち残渣を乾燥させて粉状にしたものです。例えるならミンチをフライパンで炒めて出てきた油をすべて吸い取った後に残るパッサパサの肉です。安価で安定的に製造可能でタンパク質の含有量が高く、栄養成分のムラが少ないのが特徴です。
ドッグフードを選ぶ際に「原材料の1番目に生肉が来ているものが好ましい」とよく言われます。このフードも1番目に生肉が来ているので選ぶ際の注意点を満たしていますが、実はこれ、2番目も注目してほしいです。
チキンミールが2番目に来ている場合は、動物性タンパク質の含有量からしてメインのタンパク質はチキンミールになります。生肉は7割が水分です。残り3割にタンパク質等が残っています。チキンミールはパッサパサの肉になるまで加熱するので水分がほとんどなく、タンパク質の塊です。原材料は重量順表記なので水分を含んだ生肉が原材料の中で一番重かったとしても、水分を取り除けば大したタンパク質量にはなりません。チキンミールのほうが軽いですが、タンパク質を多く含んでいます。
ほんと詐欺みたいな印象を受けるかも知れませんが、これはコストカットの手法です。生肉よりもチキンミールのほうが安価で製造できるのでメインにしたいけど、原材料の1番目は生肉じゃないと売れにくいというジレンマから生まれています。
ただ、チキンミールは多少のタンパク質変性はありますが、低コストで製造できる貴重なタンパク質源であり、調達方法/使用部位がペットフード安全法で決まっているのでそんなに悪いものではありません。このフードは生肉が1番目だけど2番目のチキンミールがメインのタンパク質、そう伝えたかっただけです。
3番目、6番目、11番目の原材料はエンドウ豆、レンズ豆、ヒヨコ豆です。
原材料の表示順はバラバラですが、同じマメ科植物なのでまとめて説明します。えんどう豆、レンズ豆、ひよこ豆はでんぷんを主体とする炭水化物を豊富に含んでいます。また、植物性タンパク質を多く含む一方で脂質は少ししか含んでいません。
これらの豆に共通してビタミンB群が豊富でバランスよくミネラル類を含んでいます。豆類は栄養面で優れており、味に癖がなく、どんな食材とも相性が良いため、炭水化物源と栄養バランスの調整役を担っています。
4番目の原材料はラムミールです。
このフードにはラムミールも入っていましたね。ラムミールはチキンミールと同じやり方で製造されますが、反芻動物のためTSE感染防止の観点から原料には可食部位のみが使われています。ラムミールはタンパク質源です。
5番目、9番目の原材料は乾燥ポテト、ポテトでん粉です。
ポテトの主成分はでん粉なので乾燥ポテトとポテトでん粉はほとんど同じ食材と言っていいでしょう。でん粉は炭水化物(糖質)で犬のエネルギー源になります。
ただし、ポテトでん粉はでん粉のみを抽出したものなので純粋な炭水化物(糖質)なのに対し、乾燥ポテトは水分を除去しただけなので植物性タンパク質を多く含んでいます。
7番目の原材料は鶏脂です。
鶏脂はオメガ6脂肪酸(リノール)の供給源です。チキンミールのところで説明しましたが、抽出した油脂が鶏脂です。残渣がチキンミールでしたよね。
鶏脂はミックストコフェロールで保存されています。これはビタミンEのことで自然由来の酸化防止剤です。
8番目の原材料はタンパク加水分解物です。
タンパク加水分解物は動植物のタンパク質を加水分解して得たアミノ酸のことです。独特のコクやうま味(使用する動植物によって変わる)を持つことからキブルに噴霧して食いつきを良くするために使われています。ナチュラルフレーバーという名前で書かれていることもあります。
10番目の原材料はニンジンです。
人参は根菜で唯一の緑黄色野菜です。人参特有の赤色はβカロテンによるもので含有量は緑黄色野菜の中でもずば抜けて多いです。βカロテンはビタミンA前駆体で体の必要量に応じてビタミンAに変換されます。つまり、βカロテンとビタミンAの両方の働きを兼ね揃えています。βカロテンは抗酸化作用および免疫賦活作用があります。
ここまで原材料をリストの上から順番に見てきました。この製品には他にも多くの原材料が含まれていますが、これよりも下に位置する原材料は評価に影響を与えそうにありません。
ただし、7つの例外があります。
まず、エンドウタンパクです。
必須アミノ酸は1種類でも一定量に満たないと、それが制限要因となります。だからタンパク質の品質(必須アミノ酸の種類と量とバランス)が大切です。
エンドウタンパクは必須アミノ酸を10種類とも含んでいるので植物由来のタンパク質としては優秀ですが、量とバランスに問題があります。メチオニン、トリプトファン、ヒスチジンの含有量が少ないので必須アミノ酸の補足またはタンパク質のかさ増しとして使用されていると推測されます。
次に、亜麻仁です。
亜麻仁は主にオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)の供給源で食物繊維と植物性タンパク質も多く含んでいます。α-リノレン酸はオメガ3系脂肪酸の一つで体内で同じオメガ3系脂肪酸のDHA,EPA(海水魚に多く含まれる)に変換して利用されます。
変換効率は低いので実はあまり効率的なオメガ3脂肪酸の摂取源ではありません。ただ、食物繊維は水溶性と不溶性のどちらも含んでいるため繊維源などその他の役割を考えると決して悪いものではありません。
次に、乾燥チコリー繊維です。
乾燥チコリー繊維は ”イヌリン” のことですね。イヌリンは水溶性食物繊維で腸内まで消化されず、腸内で善玉菌に発酵されると代謝副産物(短鎖脂肪酸)を産生します。所謂、プレバイオティクスの一つです。
次に、ひまわり油です。
ひまわり油は使用するひまわり種子の品種で成分が変わり、高オレイン酸(ハイオレイック)、中オレイン酸(ミッドオレイック)、高リノール酸(ハイリノール)に分類されます。
ドッグフードでは一般的に必須脂肪酸の供給源になるハイリノール(オメガ6脂肪酸)が使われていると思います。鶏脂と同じく、ひまわり油もミックストコフェロールで保存されています。
次に、ハーブ(バジル、パセリ、オレガノ、タイム)です。
- バジル:健胃作用、消化促進作用
- パセリ:利尿作用、関節炎の緩和、抗菌作用、駆風作用
- オレガノ:健胃作用、消化促進作用、抗けいれん作用、去痰作用
- タイム:抗菌作用、抗けいれん作用、駆風作用
バジルは消化促進を促し、消化不良や食欲不振、下腹部の膨満感の解消など胃腸の健康に働きかけます。パセリの根は利尿作用があり尿酸の排出に役立ちます。利尿作用は老廃物の排出を上手く行うので関節炎の炎症緩和にも効果的です。パセリの葉には殺菌効果のあるアピオールや発揮性オイルが含まれているので泌尿器の感染にも有効です。オレガノは胃腸の調子を整えて消化を促します。タイムは口や喉の抗菌作用があり、歯肉炎に効果的です。また、抗感染作用や咳止め、去痰作用もあり、真菌や細菌に感染して起きる乾いた喉に効果的です。
次に、アミノ酸類(メチオニン)です。
チキンミールは製造時に150℃を超える高温で調理されるのでタンパク質変性を起こします。そのため、タンパク質変性が起きた分を補うために追加でメチオニンを足してあります。このフードのメインのタンパク質はチキンミールなので必須アミノ酸のメチオニンを追加で加えてあるのは安心材料になります。アミノ酸はまんべんなく摂取しないと意味がないですからね。
最後に、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、クエン酸)です。
酸化防止剤の中でクエン酸だけ懸念点があります。それは犬の胃拡張/胃捻転(GDV)の大規模な長期リサーチ*でクエン酸を含有するフードに水を加えて与えたところリスク増加要因になったということです。ただ、このリサーチはあくまで統計でクエン酸と水の因果関係は分かっていません。
胃拡張/胃捻転は胸部の深い大型犬がもっともハイリスクですが、小型犬でもダックスフンドのような腹部が深く幅が狭い体型をした犬種は発症率が高くなります。このフードに水やスープをかけて与えることはおすすめしません。
* アメリカPurdue大学獣医学部のLarry Glickman博士による胃拡張・胃捻転の既往歴のない大型犬11種類1,914頭の犬を対象とした犬の胃拡張・胃捻転に関する対照研究
Risk Factors for Canine Bloat
https://www.vin.com/apputil/content/defaultadv1.aspx?pId=11165&id=3848657
ニュートロ シュプレモの製品情報だけではなく、会社についても調べたほうがいいです。どこで製造して、どういう原材料を使用し、品質管理はどうしているのかなど。ドッグフードは人間が食べるものではないので軽視されている現実があります。だからこそ製造業者がどういう考えを持っているのか知るべきです。
- 日本向けの独自ブランドサイト(https://nutro.jp/)があります。
- ニュートロは1926年に南カリフォルニアで創業し、日本ではグループ企業のニュートロジャパン合同会社で販売していましたが、今はマースジャパンリミテッド社に吸収合併されています。
- ミートファーストです。第一原材料に必ず肉や魚を使用しています。
- 副産物ミールや鶏の首・足・羽といった食用とされない部位は使用していません。
- 化学合成物・着色料は使用していません。
- 自然由来の酸化防止剤だけを使用しています。また、製品だけではなく、油脂原料にも自然由来の酸化防止剤を使用しています。
- イギリスのウォルサム研究所の協力のもとAAFCOの栄養基準を満たしながら、最新の栄養学に基づいた栄養基準を設定しています。
- すべて自社による原材料調達・製品製造、品質管理を行っており、その一つひとつの工程で厳格な品質基準を設けています。
- 主原料は100%自然素材です。生産者を厳選して顔を知らない生産者とは契約していません。原材料には厳しい品質基準を設けており、納入の際にも検査があります。
- 同じ食材でも調理方法が異なれば味が変わるので食材のブレンド方法(配合や製法)にこだわっています。
- 製品の輸送では一貫した管理体制を敷いています。自社製品のみを載せる専用コンテナで直送しています。
- 日本独自の品質規定をクリアしています。ペットフード製造/輸入会社として責任を持ち、日本向けの製品の厳格な品質管理を実施しています。
参照:https://nutro.jp/
成分と肉含有量の分析
ニュートロ シュプレモ 草原のレシピは原材料だけで判断すると平均以上のドッグフードに見えます。
しかし、原材料の品質だけではなく、成分(タンパク質・脂質・炭水化物)と肉の含有量も評価を下すために重要です。
ラベルの分析で乾物基準はタンパク質が33%、脂質が18%、推定炭水化物が37%と判明しました。
脂質とタンパク質の比率は約53%です。
一般的な成犬向けのドライフードと比較するとタンパク質は平均以上、脂質は平均以上、炭水化物は平均以下。
えんどう豆、乾燥ポテト、レンズ豆、ヒヨコ豆、エンドウタンパク、亜麻仁で総タンパク質を増加させることを考えても、このドッグフードはかなりの量の肉を含んでいるように見えます。
最終評価
ニュートロ シュプレモ 草原のレシピは動物性タンパク質の供給源としてかなりの量のチキンミールを使用した穀物を含まないドライフードです。星4の評価を下しました。
とてもおすすめします。
この製品はニュートロ シュプレモの穀物不使用タイプです。シュプレモにはウエット カロリーケアが存在しますが、こちらは穀物を使用しているので併用する場合は要確認です。
シュプレモ 穀物不使用(全製品)は乾物タンパク質が32.2〜33.3%で脂質は17.8%です。値が結構高いですよね。同社の同じくグレインフリーレシピのワイルドレシピほどではないですが、近いものがあります。(ワイルドレシピのほうが臓器肉が入って高タンパクでハーブと野菜・果物が入っていません)
シュプレモ 穀物不使用には一つだけ野菜または果物が入っています(人参、ほうれん草、トマト、洋梨のどれか)。これはシュプレモの特徴である ”ホリスティックブレンド” に関係していると思います。
ホリスティックブレンドは相互作用のある栄養素を考えて配合されたレシピのことで、例えば「脂質×ビタミンA」です。脂質と脂質の吸収を助けるビタミンAを配合しています。シュプレモ 穀物不使用では13種類の自然素材をホリスティックブレンドしているとのこと。
おそらく「シュプレモ 草原のレシピ」では次の素材が13種類の自然素材です。チキン(肉)・ラムミール/エンドウ豆・ヒヨコ豆・レンズ豆/乾燥ポテト/ニンジン/亜麻仁/ひまわり油/バジル・パセリ・オレガノ・タイム
この配合は他のブランドでも割とよく見る組み合わせですが....シュプレモではホリスティックブレンドと呼んでいるようです。(言い方って大切ですよね)
今回、批評したシュプレモ 草原のレシピではタンパク質に生肉とミートミールを使用し、炭水化物にはグレインフリーの王道の豆類とポテト、必須脂肪酸には亜麻仁とひまわり油、緑黄色野菜の人参を加えて作られたグレインフリーでよく見かける食材パターンのドッグフードです。
エンドウタンパク(植物性タンパク質)でかさ増ししている部分にケチをつけることができますが、他は良質で機能性成分を含んだ野菜・果物はコスト面でこれ以上入れられなかったのかな?しかし、それでも十分おすすめと言えるフードだと思います。
グレインフリーと心臓病の潜在的な関係性
アメリカ食品医薬品局 (FDA) は2019年6月27日にグレインフリー (穀物を含まない) と拡張型心筋症との潜在的な関係について3回目の調査状況を発表しました。
詳しくは「FDAがグレインフリーと心臓病との潜在的な関連性を調査対象にする」をご覧ください。
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