ニュートロ シュプレモ ドッグフードはいぬわーんで高評価の4つ星を獲得しました。
評価:
ニュートロ シュプレモ ドッグフードはドライが8種類、ウエットが6種類あります。以下は合計14種類と評価をまとめた表になります。表の成長段階に書いてある記号はそれぞれの頭文字を取ったもので【G=子犬、M=成犬・老犬、A=オールステージ、U=不明】の意味があります。
また、ここでは合計14種類を代表してシュプレモ 小型犬 成犬を批評していきますが、他の種類の批評が見たい場合は表中の内部リンクを利用してください。
原材料とラベルの分析
ドッグフードを選ぶ際には原材料に書かれた上から最初の10品目を見てください。原材料の表示は原則、重量順です。つまり、最初に書いてあるものがもっとも含有量が多いのです。
原材料:チキン(肉)、チキンミール、玄米、粗挽き米、米糠、鶏脂*、ラムミール、サーモンミール、タンパク加水分解物、エンドウタンパク、ひまわり油*、亜麻仁、ビートパルプ、オーツ麦、ココナッツ、チアシード、乾燥卵、トマト、ケール、パンプキン、ホウレン草、ブルーベリー、リンゴ、ニンジン、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、D3、E、コリン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸)、ミネラル類(カリウム、クロライド、セレン、ナトリウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅)、アミノ酸類(メチオニン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、クエン酸)*ミックストコフェロールで保存
赤字は物議をかもします。
粗灰分=10.5%以下, 粗繊維=4%以下 (推定乾物繊維量=4.4%), 水分=10%以下
測定方法 | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 |
保証分析値 | 26%以上 | 15%以上 | NA |
乾物基準 | 28.8% | 16.7% | 42.7% |
熱量基準 | 27% | 38% | 36% |
このドッグフードの最初と2番目の原材料はチキン(肉)、チキンミールです。
一番目の原材料がチキン生肉なのは良いですね。調理済みではないのでタンパク質変性がない良質な原材料です。
ただし、二番目の原材料にチキンミールが来ています。チキンミールは人間の食用部分を取り除いた後の肉片や脂身部分を集めて高温で加熱し、溶け出した油脂を抽出した後の残渣を乾燥させて粉にしたものです。
ちょっと難しいので言葉を変えると鶏皮をチリッチリに焼いて油を全部落とした後の石みたいになったやつを粉砕して粉にしたやつです。
チキンミールは乾燥物なので約七割が水分のチキン生肉と比べると同じ重量当たりのタンパク質量が多くなります。原材料表示では二番目に表示されているチキンミールですが、水分量を考慮して考えるとチキン生肉よりこのフードの主なタンパク質源であると推測されます。
3〜5番目の原材料は玄米、粗挽き米、米糠です。
玄米から米糠を取り除いたものが白米です。つまり、白米+米糠=玄米です。玄米、粗挽き米、米糠は名前こそ違いますが、すべてお米に関連している原材料で、このような原材料の配合は ”原材料の分割” と考えることができます。
原材料の分割は例えば玄米だけ大量に加えてしまうと原材料表示で1番目に来てしまうので玄米・白米・米糠のように同じ属性を持つ原材料を分解して加えることです。ただ、このフードでは推定炭水化物が42.7%なので特別含有量が多いわけではなさそうです。
ちなみに粗挽き米はブリュワーズライスのことで玄米の精米時に割れたり、欠けたりした米を集めたものです。白米と比べると低品質の原材料です。
6番目の原材料は鶏脂です。
鶏脂はオメガ6系脂肪酸(リノール酸)の供給源です。チキンミールの製造過程で抽出した油脂が鶏脂になります。香ばしい鶏肉の風味がフードに加えられます。
酸化防止のために良質な保存料のミックストコフェロールで保存されているようです。原材料の段階での保存料は書く義務(法律)はないのですが、人工保存料を不使用だとアピールしたい場合は書かれていることが多いです。
7番目と8番目の原材料はラムミール、サーモンミールです。
原材料の二番目に紹介したチキンミールと同じく、油脂を抽出した後の残渣を乾燥粉砕して肉粉・魚粉にしたものです。タンパク質の含有量が高く、製造ラインごとの栄養成分が安定しています。
9番目の原材料はタンパク加水分解物です。
タンパク加水分解物はナチュラルフレーバーと書かれていることが多い原材料ですね。特定のタンパク質を加水分解してアミノ酸まで小さくしたもので独特のコクやうま味があります。製造の最終工程で粒に吹きかけて美味しそうな匂いに仕上げるために使われています。
10番目の原材料はエンドウタンパクです。
エンドウタンパクは犬の必須アミノ酸10種類がすべて含まれてはいるものの一部のアミノ酸(メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン)の含有量が少ないです。そのため、タンパク質含有量を増やすかさ増しであったり、アミノ酸バランスの調整を目的として使われています。
ここまで原材料をリストの上から順番に見てきました。この製品には他にも多くの原材料が含まれていますが、これよりも下に位置する原材料は評価に影響を与えそうにありません。
ただし、9つの例外があります。
まず、ひまわり油です。
ひまわり種子の品種によって脂肪酸の構成が変わります。種類は高オレイン酸、中オレイン酸、高リノール酸があり、ドッグフードで使われるのは主に高リノール酸タイプです。なので基本的にオメガ6脂肪酸の供給源です。ビタミンEも豊富です。ミックストコフェロールで保存されています。
次に、亜麻仁です。
亜麻仁はオメガ3系脂肪酸のα-リノレン酸を多く含んでいます。α-リノレン酸は既成のDHA,EPAと比べて摂取効果が少ないです。なぜなら体内でそのまま利用されるわけではなく、DHA,EPAに変換してから使われるためです。変換時にはロスがあります。
ただ、亜麻仁は種実類(ナッツとかと同じ)で植物性タンパク質と食物繊維(不溶性と水溶性)を豊富に含んでいます。
次に、ビートパルプです。
ビートパルプは甜菜(砂糖大根)から砂糖を抽出した後の繊維カスです。食物繊維を提供します。イメージとしてはジューサーにリンゴを入れるとりんごジュースと皮や繊維などの繊維カスが別れて出てきますよね?あの繊維カスのほうです。
ビートパルプは抽出方法が問題になる場合があります。それは効率よく抽出するために硫酸系の薬品が使われる場合です。この場合、繊維カスに薬品が残留し、犬の体に良くない影響を起こす事があります。
抽出方法はラベル表示からでは分からないので、ここでは繊維源として評価するだけにします。”可能性がある” だけで不当に評価するわけにはいきません。気になる場合は、このフードを避けたほうがいいでしょう。
ブランドによっては公式サイトのよくある質問にビートパルプの抽出方法が書かれていたりしますが、ニュートロでは見かけませんでした。
次に、ココナッツです。
ココナッツは飽和脂肪酸の一つ、中鎖脂肪酸を豊富に含んでいるのでエネルギー源として優れています。中鎖脂肪酸は肝臓で素早く分解吸収されてすぐにエネルギーとして使えるようになります。
次に、チアシードです。
チアシードは種実類で亜麻仁と似た栄養成分を持ち、必須脂肪酸のオメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸)を豊富に含んでいます。α-リノレン酸は体内で利用可能な形(DHA,EPA)に変換されて使われます。ただ、その際に変換ロスがあるので魚油などから直接摂れるDHA,EPAと比べると摂取効率は良くありません。
チアシードには植物性タンパク質、食物繊維も多く含んでいます。植物性タンパク質は必須アミノ酸をすべて含んでいるものの、トリプトファンの含有量が少なく、アミノ酸バランスは良くありません。食物繊維は大半がグルコマンナンと呼ばれる水溶性食物繊維です。
次に、野菜と果物(トマト、ケール、パンプキン、ホウレン草、ブルーベリー、リンゴ、ニンジン)です。
機能性成分を多く含んだ野菜と果物が数多く入っていますね。トマトは抗酸化性の高いリコピン源です。人参、ケール、ほうれん草、パンプキンは緑黄色野菜でβ-カロテンの供給源です。βカロテンはビタミンA前駆体で必要量に応じてビタミンAに合成されます。使われなかった分は抗酸化作用や免疫賦活作用として働きます。
ブルーベリー、リンゴはポリフェノールを含み抗酸化作用があります。リンゴの食物繊維にはペクチンと呼ばれる水溶性食物繊維(プレバイオティクス)が含まれています。
次に、ミネラル類です。
ミネラル類を見る限りマンガン、亜鉛、鉄、銅といったように元素の名前を並べただけなのでキレート加工されているように見えません。
ただし、アメリカで売られているURTLAシリーズ(シュプレモの海外版)はキレート加工されているので、もしかしたら微量必須ミネラルはキレートミネラルかもしれません。
次に、アミノ酸類(メチオニン)です。
メチオニンは食事から摂らなければいけない必須アミノ酸の一つです。タウリンの合成に必要なアミノ酸でもあります。
メチオニンは鶏肉に十分含まれていますが、このフードのメインの動物性タンパク質はチキンミールに当たるのでアミノ酸の不足分を補うために加えているのでしょう。
チキンミールは製造の際に150℃を超える高温で調理されるのでタンパク質の変性が起こる可能性が高いです。特にメチオニンが損なわれやすいので、こうやってアミノ酸だけを別に加えているのだと考えられます。
最後に、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、クエン酸)です。
この中でクエン酸は少し注意が必要かなと思います。クエン酸は柑橘類などに含まれている酸味成分で安全なものです。しかし、アメリカのPurdue大学が行った研究*によるとクエン酸入りのドライフードに水またはスープを加えて与えると胃拡張・胃捻転(GDV)のリスク増加要因になったとのことでした。この研究は対照研究で因果関係までは追求されていませんが、知識として知っておいたほうがいいでしょう。
* 胃拡張・胃捻転の既往歴のない大型犬11種類1,914頭の犬を対象とした対照研究。この研究はハイリスクとされる胸部の深い大型犬を対象としていますが、小型犬でもダックスフンドのような腹部が深く幅が狭い体型の犬種は胃拡張・胃捻転の発症率が高くなります。
Risk Factors for Canine Bloat
https://www.vin.com/apputil/content/defaultadv1.aspx?pId=11165&id=3848657
ドッグフードはラベルを見て、そのフードの方向性(高級志向/低価格など)を推測できます。しかし、原材料の品質や製造・管理までは知ることができません。そこで面倒な作業ですが、そのフードの特徴やどのような基準または品質管理が行われているのか公式サイトで確認をしましょう。以下はニュートロジャパンで編集者が確認した情報です。
- 日本向けの独自ブランドサイト(https://nutro.jp/)があります。
- ニュートロは1926年に南カリフォルニアで創業し、日本ではグループ企業のニュートロジャパン合同会社で販売していましたが、今はマースジャパンリミテッド社に吸収合併されています。
- ミートファーストです。第一原材料に必ず肉や魚を使用しています。
- 副産物ミールや鶏の首・足・羽といった食用とされない部位は使用していません。
- 化学合成物・着色料は使用していません。
- 自然由来の酸化防止剤だけを使用しています。また、製品だけではなく、油脂原料にも自然由来の酸化防止剤を使用しています。
- イギリスのウォルサム研究所の協力のもとAAFCOの栄養基準を満たしながら、最新の栄養学に基づいた栄養基準を設定しています。
- すべて自社による原材料調達・製品製造、品質管理を行っており、その一つひとつの工程で厳格な品質基準を設けています。
- 主原料は100%自然素材です。生産者を厳選して顔を知らない生産者とは契約していません。原材料には厳しい品質基準を設けており、納入の際にも検査があります。
- 同じ食材でも調理方法が異なれば味が変わるので食材のブレンド方法(配合や製法)にこだわっています。
- 製品の輸送では一貫した管理体制を敷いています。自社製品のみを載せる専用コンテナで直送しています。
- 日本独自の品質規定をクリアしています。ペットフード製造/輸入会社として責任を持ち、日本向けの製品の厳格な品質管理を実施しています。
参照:https://nutro.jp/
成分と肉含有量の分析
シュプレモ 小型犬 成犬は原材料だけで判断すると平均的なドッグフードに見えます。
しかし、原材料の品質だけではなく、成分(タンパク質・脂質・炭水化物)と肉の含有量も評価を下すために重要です。
ラベルの分析で乾物基準はタンパク質が29%、脂質が17%、推定炭水化物が43%と判明しました。
脂質とタンパク質の比率は約58%です。
一般的な成犬向けのドライフードと比較するとタンパク質は平均以上、脂質は平均以上、炭水化物は平均以下。
エンドウタンパク、亜麻仁、チアシードで総タンパク質を増加させることを考えても、このドッグフードは適度な量の肉を含んでいるように見えます。
最終評価
シュプレモ 小型犬 成犬は動物性タンパク質の供給源として適度な量のチキンミールを使用した穀物を含むドライフードです。星4の評価を下しました。
とてもおすすめします。
編集者は日本で販売されているフードでも外国産なら海外の公式サイトを確認することが多いです。そこで気がついたのですが、シュプレモは日本販売向けの製品でアメリカではURTLAの名前で販売されています。
ただ、シュプレモは原材料が日本向けにローカライズされているのでアメリカのURTLAと完全に同じではありません。シュプレモ製品の確認をするなら英語公式サイトよりもニュートロジャパンがあるのでそちらで確認したほうが正しい情報を得ることができます。
シュプレモのドライフードに共通しているのは原材料です。並び順も最初は完全に一致していて一番目に鶏肉、二番目にチキンミール、三番目に玄米、四番目は1つの製品を除いて粗挽き米が並んでいます。これはニュートロが主張する ”ホリスティックブレンド” の考え方があるからでしょう。
ホリスティックブレンドは相互作用のある栄養素を配合する考え方で、例えば「脂質」と脂質の吸収を助ける「ビタミンA」を配合し、栄養素としての働きを高め合うようにしています。だから似たような原材料になっています。もちろんこれはニュートロの建前で原材料調達やコスト面が関係していますが、シュプレモ シリーズとして一貫した方向性があるので悪くないと思います。
シュプレモにはグレインフリーもありますが、ここで紹介している穀物使用タイプとの違いはホリスティックブレンドの配合量(17種類:13種類)です。グレインフリーが13種類です。それに炭水化物源に使用されている原材料が違います。穀物が使えませんからね。ハーブの有無も違います。グレインフリーにはハーブが入っています。
シュプレモにはウエットフードもあります。ウエットは総合栄養食ですが、”カロリーケア” と商品名が付いていることから分かるようにドライと併用することでボリュームは減らさず、カロリーを抑えて体重管理がしやすくなる特性があります。(子犬用はカロリーケアではありません)
ただ、ウエットで一つ気になるところはミネラル類と増粘多糖類が省略されているところです。ラベルで省略されているのは分かります。ペットフード安全法では内容量が100g以下またはラベルの表示可能面積が120㎡以下であれば省略を認めているからです。でも公式サイトには何が使われているのか書いてほしかったです。アメリカの公式サイトではミネラル類と増粘多糖類が省略されずに書かれていますからね。アメリカで書いて、日本で書かないのは良くないですよ。
ニュートロジャパンで良いなと思うところがあります。それはニュートロジャパン(日本に拠点)があることで並行輸入品が出回りにくく、安心して買えるところです。それにニュートロジャパンがあるので対応のレスポンスが早いです。お問い合わせをしても代理店を経由(消費者→代理店→本国→代理店→消費者)する必要がないので返答が早いし、内容も代理店がまとめたものではなく、ダイレクトなものが帰ってきます。
「品質管理に最新の注意を払っています。」と主張するフードはたくさんありますが、たしかに本国ではそうなのかもしれません。しかし、遠い日本では当てはまらない場合があります。ニュートロジャパンがあることで力の入れよう、本気度、責任が感じられます。しっかりとした代理店に任せるのが悪いわけではありませんが、本気でその国で商売をするなら拠点と独自ブランドサイトは作るべきでしょう。代理店任せのフードより信頼性が高いという点でニュートロのシュプレモはおすすめできます。
グレインフリーと心臓病の潜在的な関係性
アメリカ食品医薬品局 (FDA) は2019年6月27日にグレインフリー (穀物を含まない) と拡張型心筋症との潜在的な関係について3回目の調査状況を発表しました。
詳しくは「FDAがグレインフリーと心臓病との潜在的な関連性を調査対象にする」をご覧ください。
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