ビタミンK3はドッグフードで安全ですか? 答えは賛否両論です。安全という人も、危険だと言う人もいます。ビタミンK3は議論を呼ぶビタミン剤です。
ビタミンKはK1からK5の5種類が存在します。ドッグフードで一般的なのはK1からK3までです。
- ビタミンK1:緑の葉菜類などに含まれる
- ビタミンK2:犬の腸内に生息する細菌によって生成される
- ビタミンK3:人工合成ビタミンK、別名メナジオン
ビタミンKの作用は主に血液の凝固作用です。ビタミンKが不足していると出血したときに血が固まるのが遅くなり、止まりにくくなります。それに骨粗鬆症の治療薬に使われていたり、動脈の石灰化を抑制する作用があります。
なぜ、ビタミンK3 (メナジオン) は賛否両論があるのでしょうか。
安全派:ビタミンKは微量栄養素で毒性の報告はない
安全派の主張:犬に与える食べ物で誤解を生みやすいのが「自然」と「人工」です。“自然”と書かれていれば安心で良いもの、“人工”と書かれていれば有害で悪いものと勝手に思い込みをしがちです。
良いか悪いかの根拠が「自然=良い、人工=悪い」では非常に懐疑的であり、何の証明もなされていません。
ビタミンKは犬にとって微量栄養素です。ドッグフードに混ぜることはおかしいことではありません。ビタミンK3の危険摂取量も1日量の1,000倍であるため安全です。それに低用量ビタミンK3 (メナジオン) で家畜またはペットの毒性の報告例はありません。
このことからドッグフードにビタミンK3 (メナジオン) を含めるのは安全だと主張できます。
危険派:ビタミンK3は人間のサプリメントで禁止されている
危険派の主張:ビタミンK1およびK2は過剰に摂取しても毒性がないことが報告されています。しかし、人工合成のビタミンK3は過剰摂取すると人体に影響を与えることが分かっています。
オレゴン州立大学の研究で乳児にビタミンK3を5mg/日以上与えると溶血性貧血・核黄疸・高ビリルビン血症を誘発することが分かっています。これによって米国ではアメリカ食品医薬品局 (FDA) により市販の人間用サプリメントでビタミンK3の使用が禁止されています。FDAによって人間はビタミンK サプリメントが禁止されているのに「犬には与えていい」と言うのは“おかしい”として危険物だと主張しています。
それに犬は腸内細菌でビタミンKを合成して必要量を得ているのでAAFCO (米国飼料検査官協会) が定めるドッグフードの必須栄養成分にビタミンKの必要量は記載されていません。わざわざリスクある選択を取る必要がないとも言います。
結論:潜在的な危険性を考慮すべきでしょう
危険派の主張は人間に対する研究結果を元にしていますが、犬に対してもビタミンK3 (メナジオン) を大量に使用すると有毒になる可能性があります。しかし、市販のドッグフードに含まれるような微量のビタミンK3程度ではおそらく安全でしょう。
しかし、毎食内容を変える傾向があるほとんどの人間とは異なり、犬は一度に何食分も購入するドッグフードを毎日食べます。そして、飼い主がドッグフードを変更しなければ生涯同じものを食べ続けます。
ビタミンKは体内に蓄積していくのでビタミンKが含まれるドッグフードは潜在的な危険性があると考慮すべきではないかと考えます。
参考
健康長寿ネット, ビタミンKの働きと1日の摂取量, 2019年8月8日
The SkeptVet, Vitamin K3 (Menadione) In Pet Food: Is It Safe?, July 8, 2011
wikipedia, Menadione
ビタミンK解説, 「健康食品」の安全性・有効性情報, 国立健康・栄養研究所
ビタミンK, オレゴン州大学 ライナスポーリング研究所