ドッグフードに含まれる肉副産物は、基本的に人間の食品を加工した後に残った余分なものであることが多いです。[1]
例えば、イメージとして大豆から豆腐を作ると副産物として「おから」が残ります。このように製造過程または加工過程で余ったものが副産物です。
「副産物」という言葉は、一つ一つの文字の意味を考えると何となく悪いように聞こえますが、生き物に感謝して、「もったいない」の精神ですべての部分を利用することは一般的なやり方でおかしいことではありません。
肉副産物の定義
肉副産物の定義はペットフード安全法には載っていないため、定義はありません。
しかし、ペットフード公正競争規約の総合栄養食の証明基準はAAFCO (米国飼料検査官協会) の分析試験による栄養基準、または給与試験プロトコールに基づいて作られている[2]のでAAFCOの肉副産物の定義が一般化しています。
AAFCOの肉副産物の定義は以下のように書かれています。意訳ですので原文は脚注[4]をご覧ください。
肉副産物は屠殺された哺乳類に由来する肉以外のレンダリング[3]されていないきれいな部分です。
それは筋肉組織以外の内臓や骨を含む動物の大部分で肺、脾臓、腎臓、脳、肝臓、血液、骨、部分的に脱脂肪された低温脂肪組織、内容物が除去された胃および腸などが該当します。毛、角、歯、蹄は含みません。
これは人間が食べる部分(肝臓、腎臓、胃)も一部含みますが、米国では通常人間によって消費されない部分も含みます。
肉副産物の中には乳房や肺のような米国農務省によって人間の食用と見なされないものも含まれますが、動物にとっては安全で栄養価があります。
副産物が一種類の動物から作られる場合は、例えば「ビーフ副産物」のように種類を特定できるように名前を付ける必要があります。
また、AAFCOの「肉 (meat)」の定義[4]と同様に副産物が牛、豚、羊、ヤギ由来でない場合はその動物の種類を特定しなければいけません。[4]
家禽由来の副産物の場合は家禽副産物になります。家禽副産物と肉副産物はほとんど同じなので触れませんが、一つだけ言うと家禽副産物は頭と足を含んで良いことになっています。[4]
肉副産物は必須栄養素を豊富に含んでいる
ドッグフードに関連するWebサイトやその他の情報源は、ほとんどの場合において原材料に肉副産物を含んでいるドッグフードを避けるべきであるとアドバイスします。
しかし、肉副産物の主に肝臓、脾臓、心臓などの臓器は通常の肉よりも重量あたりのビタミン、ミネラル、タンパク質などの必須栄養素を豊富に含んでいます。
「副産物」は人間の食品を加工した後の残り物から作られることが名前の由来であり、安全性や栄養は通常の肉と比べて劣っているわけではありません。
豆腐の例を思い出してください。豆から豆腐を作り、おからが残りましたが、おからは安全性や栄養が低いわけではありませんよね?
しかし、興味深いことに多くの製造業者は、ドッグフードの原材料に肉副産物の定義に当てはまる臓器肉やその他の材料を使用しているにもかかわらず、「肉副産物」の表示を避けて個別に肝臓、心臓、腎臓などと製品ラベルに表記しています。
さらに、こうした企業の中には肉副産物を含まないと宣伝しているところもあります。
そこで読者は疑問に思うかもしれません。
「肉副産物は犬にとっての必須栄養素を多く含んでいるのに、なぜ製造業者は肉副産物を隠そうとするのですか?」
肉副産物はラベルから成分比が分からない
肉副産物は「屠殺された哺乳類に由来する肉以外のレンダリングされていないきれいな部分」であり、定義は内臓や骨など広範囲に及ぶので使用する材料によって品質(栄養価)が大きく異なります。
例えば「鶏肉副産物」と製品ラベルに表記してあった場合、使用される材料は肝臓、心臓、腎臓の混合物ですか? それとも鶏の足だけですか?
例えなので極端な例を挙げましたが、鶏肉副産物と書かれているなら栄養価の高い臓器肉が豊富に含まれていることもあれば、犬にとってちっぽけな栄養にしかならない材料が大半を占めていたりすることも考えられます。
ここでの問題は、肉副産物は特定の食材を必ず使用しなければいけないなどの規則はなく、製品ラベルには「肉副産物」としか書かなくていいことです。
品質は製造業者のみしか知りえず、消費者は肉副産物を懐疑的な目で見るしかありません。
肉副産物はレンダリングを行えば4Dを含むことができる
肉副産物はレンダリングを行えば4D (病死した動物等) [5]を含むことができます。
肉副産物は定義において「屠殺された」とあるので4Dは該当しません。それにそもそも米国農務省が屠畜場に4Dの持ち込み自体を認めていません。[6]
しかし「副産物」のより広い定義の基では4Dを使用してもバクテリア、ウイルス、寄生虫、その他の感染性生物を除去すれば飼料にしても良いとされます。[6]
そして一般的にはレンダリングを行えば加熱処理の際に有害な微生物を除去できるので、肉副産物をレンダリングすれば4Dを含めても問題ないとなっています。[6]
肉副産物は定義において「レンダリングされていない」となっているのでレンダリングした後は名前が変わります。以下のような名前になります。
- ミートミール (肉粉)
- ミートボーンミール (肉骨粉)
- 副産物ミール
肉副産物の定義内で使用する材料によってレンダリングした後の名前が変わります。
例えばミートミールは血液、毛、蹄、皮、糞尿、胃および第一胃の内容物を除く、哺乳類からレンダリングされたものとなっています。[4]
AAFCOとしては最終的に栄養素と安全性を保っていれば製造業者が調達する食材に口出ししないというスタンスなので有害な微生物を除去するなら4Dを含めても良いとなっています。
4Dを使えば安価でドッグフードが作れます。しかし、仮に4Dばかりでドッグフードを作ろうとしたら安定供給できるのでしょうか。
そう考えると4Dの混入を疑問視できますが、4Dを含めても良いとなっている以上、肉副産物でレンダリングされたものは物議をかもすとせざるを得ません。
まとめ
肉副産物と肉副産物をレンダリングしてできたものは、適切に製造されたら広範囲の必須栄養素を提供することができます。
しかし、食材に何を使っているのか分からない暗い面があるのでいぬわーんでは物議をかもすと評価を下しています。
脚注
*1 “Byproducts”, AAFCO, 2019年7月3日閲覧
*2 「ペットフードの表示について」, ペットフード公正取引協議会, 2019年7月3日閲覧
*3 レンダリングとは、熱と圧力を加えて、微生物を殺すのとともに脂肪の分離と水分を取り除き、主にタンパク質とミネラルを残す製法。イメージとしては脱脂粉乳のようなもの。
*4 “What is in Pet Food”, AAFCO, 2019年7月3日閲覧
*5 4Dは次の事柄の頭文字 (英語) がすべてDであり、4つの状態の動物からこのように呼ばれる。 (1.死んでいる、2.死にかけている、3.病気にかかっている、4.障害を負っている)
*6 “FAQs – Frequently Asked Questions”, AAFCO, 2019年7月4日閲覧