ライフステージは犬の一生のうち子犬や成犬といった栄養必要量に変化が起こる時期のことを示します。犬のライフステージは4つに分類されています。[1]
- 妊娠期/授乳期 (母犬)
- 幼犬期/成長期 (子犬)
- 成犬期/維持期 (成犬 / 老犬)
- 1〜3まで全て満たすものは「全成長段階/オールステージ」
この分類は与えるドッグフードを考えるときの重要な目安になります。犬は成長段階によって必要なエネルギー量が異なるからです。犬に元気で長生きしてもらうには各成長段階に求められる栄養素を満たすドッグフードを与えることが望ましく、成長段階ごとに栄養基準が定められています。
栄養基準はAAFCO (米国飼料検査官協会) の栄養プロファイルに基いて作られた「ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則」に定められた栄養成分等に準じています。[2]
犬は飼い主に与えられたものしか食べられません。だからこそ飼い主が責任を持ってドッグフードを選んであげる必要があります。
概要
犬にはライフステージが4つあります。各成長段階で求められる栄養素が違うので成長段階に応じた専用のドッグフードを与えましょう。
妊娠期/授乳期のドッグフード

妊娠期/授乳期は妊娠中と出産後の授乳する期間のことです。一般的に犬が妊娠すると食欲に変化が現れます。子のために栄養を送る必要があるので通常よりも多くの栄養を欲します。しかし、成犬用フードをたくさん与えるのはいけません。[3]
妊娠初期はつわりに似た症状が起こり、食欲が低下するときがあるため栄養を欲しているのに食べられないときがあります。早めに成犬用フードより栄養豊富で消化性の高い食事に切り替えてあげる必要があります(消化性が高いと栄養素を最大限吸収できる)。
また、妊娠後期はお腹が圧迫されて一度にたくさんの量を食べることができません。やはりここでも少量で栄養を補える消化性の高い食事が必要とされます。
出産後の授乳期は犬の生涯で一番エネルギーを使う時期です。ここでも高タンパク、高エネルギー食が必要です。
妊娠期/授乳期ともに母犬は二人分の栄養を求めます。通常の成犬用フードでは母犬の求めている十分なカルシウムとエネルギーを満たすことができません。母犬には妊娠期/授乳用のフードを与えましょう。通常、子犬用フードと兼用になっていることが多いです。
概要
妊娠期/授乳期はお腹の子のために高いエネルギーを必要とする期間です。妊娠中から産後の離乳するまで専用フードを与えましょう。
幼犬期/成長期のドッグフード

幼犬期は生後8週齢前後までの子犬のことを言います。この頃になると乳歯が生え始め、母犬の食べているドッグフードに興味を持ち始めるので離乳食として子犬用フードを人肌程度のぬるま湯でふやかしてペーストにしたものやウエット状にしたものを与えることできます。[3]
成長期は主に1歳までの子犬のことを言います。ただ、成長速度は品種やサイズによって異なり、一般的に小型犬のほうが早く成長し、大型犬はゆっくりと成長します。例えば超小型犬は10ヶ月齢、大型犬は1歳半まで子犬と見なすことができます。[3]
離乳後から成犬までの間は骨格や他の組織の発育に極めて重要な時期であり、子犬は体の成長を助けるために成犬より栄養価が高く、消化性の高い食事を必要とするので子犬用に栄養設計されたドッグフードを与えましょう(子犬は胃の発達が未熟で消化不良を起こしやすいため消化性も重要です)。
なお、大型犬の子犬は過剰に栄養を摂取することで「股関節形成不全」などの整形外科疾患を発症することがあるので絶対に専用のドッグフードを与えるようにしてください。詳しくは「大型犬の子犬におすすめのドッグフードと股関節形成不全の手助けのヒント」をご覧ください。
大型犬の子犬用は他の子犬用フードよりも関節ケア成分が含まれ、カルシウムとカロリーが低い傾向になっており、ゆっくりと成長を促し、痩せた状態を保ちます。
概要
子犬は急激な成長のために栄養価と消化性の高い子犬用フードを必要とします。大型犬の子犬は成長時に股関節形成不全になりやすいので注意が必要です。
成犬期/維持期のドッグフード

成犬期は主に1歳から6~8歳前後の成犬のことを言います。一般的に大型犬のほうが成長速度が遅いものの、老いるのは小型犬よりも早いとされます。[3]
成犬期は体が大人になり、子犬よりも体重あたりに必要なエネルギー量が少なくなるので子犬時代のような高カロリー食はもう必要ありません。むしろ子犬と同じようなものをいつまでも食べ続けると肥満傾向になります。
成犬期のドッグフードは活動量に応じた体のエネルギー/タンパク質の維持を目的として栄養設計されています。そしてさまざまなタイプのドッグフードが存在します。
- 避妊・去勢した犬
- ダイエット(減量)
- グレインフリー
- 皮膚・被毛に良い
- インドア(室内犬)
- 療法食 (持病持ち)
- 好き嫌いがある
- 食物アレルギーに配慮
もちろん、これらのカテゴリーに属さない一般的な成犬用ドッグフードも存在しており、目的に応じて選ぶのが成犬期のドッグフードの選び方です。
概要
成犬は1歳から6~8歳前後までの犬で活動量に応じたエネルギー量のドッグフードで十分になります。ドッグフードはさまざまな種類が存在し、目的に応じて選びます。

維持期は主に6~8歳以降のシニア犬のことを言います。成犬がシニア犬になる年齢は品種とサイズによって異なりますが、小型犬ほど遅く、大型犬ほど早い傾向です。[3]
維持期は人間で言うならばおじいちゃん、おばあちゃんなので成犬期よりも基礎代謝と体温が下降し、非活動的になります。そしてDER (一日に必要なエネルギー要求量) は7歳齢頃までに12〜13%減少すると言われています。[4]
そのため成犬期のときと同じドッグフードを与え続けると肥満になります。高齢になったらシニア犬用に栄養設計されたドッグフードに切り替えてあげましょう。
また、かなり高齢になると嗅覚や味覚が衰えて食事をあまり食べなくなることがあります。このよう場合は少量でも十分な栄養補給ができるハイシニア用のドッグフードを与えましょう。
概要
維持期は6~8歳以降のシニア犬のことです。シニア犬になるとDERが減少するので太らないように注意が必要です。食欲が低下したら少量でも十分に栄養がとれるハイシニア用のドッグフードに切り替えましょう。
全成長段階/オールステージのドッグフード

全成長段階/オールステージ(以下、オールステージ)は子犬・成犬・老犬などあらゆるライフステージの栄養基準を満たした完全食 (総合栄養食) なので全年齢の犬に与えることができます。[3]
オールステージは年齢が異なる犬の多頭飼いをしている方に便利です。例えば【6ヶ月の子/2歳の子/7歳の子】を飼っている場合、子犬用と成犬用とシニア犬用のドッグフードを用意する必要があります。しかし、オールステージなら同じドッグフードをパッケージに明示された成長段階ごとの給餌方法に従って与えるだけで済みます。それに多頭に与えていると消費量も多いので酸化する前に使い切りやすいのもメリットです。
ただ、オールステージはカロリーが高い傾向にあります。子犬が求める高い栄養素にも対応できるようにバランスがとられているので、どうしても高カロリー寄りになってしまい、子犬以外は肥満傾向になる場合があります。あくまで「なる場合」です。
そのため、例えばシニア犬で活動的なら問題ありませんが、筋力低下等の理由により運動量が低下して肥満傾向になってきたら給餌量を減らす工夫を行うと良いでしょう。ただし、推奨量よりも与える量が大幅に少なくなった場合は総合栄養食としての機能が失われるので成長段階に合わせたフードに移行する必要があります。
概要
オールステージはあらゆるライフステージの栄養基準を満たした完全食です。ただし、維持期 (成犬・シニア犬) が必要としていない子犬のための栄養素が追加されているため、すべての維持期の犬に最適であるとは限りません。
脚注
*1 「ペットフードの表示に関する公正競争規約」, (平成28年11月22日), 公正取引委員会,消費者庁 告示第10号
*2「ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則」, (平成27年7月14日), 公正取引委員会,消費者庁
*3 「ペットフードの種類」, 一般社団法人ペットフード協会, (2020年11月29日閲覧)
*4 Lifestage Nutrition of Dogs and Cats/by Hiroshi Sakane (Mark Morris Institute, Japan 135-0016)