アメリカ食品医薬品局 (FDA) は2019年6月27日にグレインフリー (穀物を含まない) と拡張型心筋症との潜在的な関係について3回目の調査状況を発表しました。
発表以降、さまざまな媒体で報告内容の解釈が行われましたが、いぬわーんは第三者の解釈よりも正確な報告内容を読むべきだと考えます。
以下にFDAへの外部リンクを張っておきます。
- FDA Investigation into Potential Link between Certain Diets and Canine Dilated Cardiomyopathy,リンク切れにより、FDAアーカイブ版
- Vet-LIRN Update on Investigation into Dilated Cardiomyopathy (2019年6月27日更新)
- Questions & Answers: FDA Center for Veterinary Medicine’s Investigation into a Possible Connection Between Diet and Canine Heart Disease (2019年6月27日更新)
グレインフリーと拡張型心筋症の関連性はまだ調査段階
犬の拡張型心筋症は特別珍しいとは見なされていませんが、FDAへの報告の増加と報告された症例の多くは遺伝的に拡張型心筋症の発症率が低い犬種であったためFDAで原因の調査が始まりました。
しかし、症例報告の90%がグレインフリーのドッグフードを食べていたことが分かっているのでグレインフリーと拡張型心筋症には関係があるのではないかと考えて調査を続けています。
拡張型心筋症とは何ですか?
拡張型心筋症は心臓の心室が広がってポンプ機能が弱まり全身に必要量の血液を送り出すことができなくなって、その結果として心不全を引き起こす心筋疾患です。[1]
拡張型心筋症の報告件数
2014年1月1日から2019年4月30日の間に、FDAは拡張型心筋症と診断された524例 (犬 515件、猫 9件) の症例報告を受け取りました。これらの症例は同一家庭の動物も含まれます。
報告件数が少ないのは心臓の病気は治療費の負担が大きいからだと考えられます。
以下は報告された犬種一覧になります。

出典:FDA, 2019年4月30日現在
- ゴールデンレトリバー (95件)
- ミックス犬 (62件)
- ラブラドールレトリバー (47件)
- グレートデン (25件)
- ピットブル (23件) など
レポートで報告されたペットフードブランド
拡張型心筋症でFDAに報告されたペットフードの特性を明らかにするため、犬が食べていたドッグフードの製品ラベルを調べたところ犬が食べていたドッグフードはグレインフリーが90%を占めていました。
さらに共通して、主成分に豆類が含まれていたのが93%に及んでいました。また、より少ない割合でじゃがいもも含まれていました。
以下はFDAが報告を受けたメーカーをまとめたグラフです。

出典:FDA, 2019年4月30日現在
- Acana (67件)
- Zignature (64件)
- Taste of the Wild (53件)
- 4Health (32件)
- Earthborn Holistic (32件) など
この結果は、グレインフリー (主成分に豆類とじゃがいも含む) と拡張型心筋症の関連性を示しているように見えますが、まだ調査中ではっきりとした研究結果は出ていません。
私には拡張型心筋症を発症した犬の特徴が裕福な家庭の犬に思えます。
アメリカの話ですから医療費は高額になります。アカナは価格帯が高いドッグフードです。ある程度の裕福なご家庭でなければどちらも難しいでしょう。
そこで貧しい家庭の犬はどうでしょうか。拡張型心筋症とは無縁でしょうか? 環境要因を考えると高額医療費は支払えません。ドッグフードも低価格帯のものでしょう。貧しい家庭の犬は拡張型心筋症を発症していないのでしょうか?
拡張型心筋症の報告例が少ないことの側面を考えるとアカナを筆頭としたドッグフードが悪いと一概に決めつけるのは時期早々だと考えます。
グレインフリーの食事を変えたほうがいいですか?
FDAは現時点の収集した情報に基づき「ドッグフードの変更を勧めることはしていません」と言っています。
しかし、拡張型心筋症のような報告があれば愛犬にFDAが発表したリストの中にあるドッグフードを与えるのは不安に思うでしょう。
そこでおすすめしたいのがドッグフードのローテーションです。
いくつかのメーカーのドッグフードをローテーションして与えることでドッグフードが犬に与える影響を最小限に抑えることができます。
脚注
*1 MSDマニュアル家庭版, 拡張型心筋症, 2019年7月24日閲覧