犬にとって正しいドッグフードを選ぶには次のことを行ってください。
- 総合栄養食であることを確認する
- 犬の成長段階に合わせる
- 原材料の最初の10品目を確認する
- 乾物基準でタンパク質と脂質を見る
総合栄養食であることを確認する
ペットフードの表示に関する公正競争規約では「ペットフードの目的」を明記することになっています。[1]
ペットフードの目的は使用用途 (総合栄養食・間食・療養食・その他の目的食) を明らかにすることです。毎日の主要な食事に該当するのは総合栄養食です。[2]
総合栄養食は、指定された成長段階 (後述) において総合栄養食と水だけで犬に必要なエネルギーをすべて満たすように設計されています。[2]
犬に必要なエネルギー量はペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則 (以下、施行規則) に定められた栄養成分等に準じています。
施行規則の定める栄養成分等の値はAAFCO (米国飼料検査官協会) の分析試験による栄養基準、または給与試験プロトコールに基づいています。[3]
よって、ドッグフードは総合栄養食が明記してあるものを買うべきです。総合栄養食の文字は包装の裏面または側面に印刷されていることが多いです。
犬の成長段階に合わせる
犬は成長段階によって必要なエネルギー量が異なります。
例えば活発的で成長中の子犬は成犬とは異なる比率の栄養素を必要とします。あまり活発的でない成犬は子犬のために作られたカロリー豊富なドッグフードを食べたら肥満になります。
このように犬は成長段階によって必要な栄養素の量に違いがあるので、ドッグフードは犬の成長段階に合わせて作られたものを選びましょう。
犬の成長段階は以下の4つに分類されます。[2]
- 妊娠期/授乳期
- 幼犬期/成長期又はグロース
- 成犬期/維持期又はメンテナンス
- 1~3まで全てを満たすものは「全成長段階/オールステージ」と分類されます
施行規則により総合栄養食はドッグフードが適用する犬の成長段階を併記することになっています。[2]
犬に与える毎日の食事は「総合栄養食」と「犬の成長段階」を目印に購入しましょう。
成長段階の定義はありますか? 何歳から何歳まで?
犬の成長段階の定義はありますか?
いいえ、ありません。犬の成長は個体差があるのですべての犬に当てはまるような成長段階の指標はありません。
しかし、一般社団法人ペットフード協会によると一般的には以下のような年齢別のライフステージに分けられます。[4]
- 妊娠期/授乳期:生後4週齢前後まで
- 幼犬期:生後8週齢前後まで
- 成長期:1歳まで(大型犬は1歳半、超小型犬は10ヶ月齢)
- 成犬期:1歳から6~8歳前後まで
- 維持期:6~8歳以降
大型犬の子犬はカロリーの過剰摂取で股関節形成不全の危険性があります。そのため与えるドッグフードは成長段階が成長期またはオールステージのいずれかに該当し、さらに「大型犬の成長を含む」と書いてあるものを選んでください。
より詳しくは「大型犬の子犬におすすめのドッグフードと股関節形成不全の手助けのヒント」をご覧ください。
原材料の最初の10品目を確認する
犬の総合栄養食は毎日の食事として与えることを目的とし、総合栄養食と水だけで犬に必要な栄養素をすべて取れるように設計されているので使用されている原材料は多岐にわたります。
使用されている原材料が多ければ多いほど知識が必要で正しいドッグフードの選び方が難しいのではないか? と思うかもしれませんが、そこまで難しくありません。
ドッグフードを選ぶ際には、原材料に書かれた上から最初の10品目を見てください。
原材料の表示は重量順です。つまり、最初に書いてあるものがもっとも含有量が多いのです。
そして、特に最初の5品目を見てください。最初の原材料は肉類や魚類のような動物性タンパク質のものが一般的です。チキン、ラム肉、ターキー、サーモンが代表的です。最初の原材料に肉類や魚類が書かれていると、そのドッグフードはより少ない副産物またはより少ない穀物であることを間接的に教えてくれます。
ただし、原材料の下位の食材でも「原材料の分割」と呼ばれる含有量を偽る手法があるので注意が必要です。
また、10品目の下に植物由来のタンパク質があれば、それは肉の含有量を誤魔化そうとしているので考慮が必要です。安価な植物由来のタンパク質は業者が価格競争で勝つために含めています。植物由来のタンパク質は肉と比べるとタンパク質の品質 (消化性必須アミノ酸スコア) が悪く、犬が必要とするアミノ酸がバランスよく含まれていません。
後は犬にとって悪い添加物が入っていないか調べてください。
- エトキシキン
- BHA、BHT
- 没食子酸プロピル
- 亜硝酸ナトリウム
- 化学着色料
- プロピレングリコール
- メナジオン など...
原材料は製品ラベルに必ず書かれています。もしくは公式サイトの製品紹介で見ることができます。公式サイトに原材料が書いていない場合は経験上、あまり品質が良くありません。
乾物基準でタンパク質と脂質を見る
原材料で安全性を確認したら製品ラベルに書かれている保証された成分に乾物基準を適用してみましょう。安全な食材しか使用していなくても、肉の含有量が少なく、穀物や脂肪が多い低品質のドッグフードかもしれません。
AAFCO (米国飼料検査官協会) では乾物基準でドライフードのタンパク質が成犬は最低18%、子犬または授乳期の犬では最低22.5%であることを推奨しています。脂肪は成犬が最低5.5%、子犬または授乳期の犬は最低8.5%を推奨しています。[6] この数値は必ず満たしていることを確認しましょう。
なお、いぬわーんでは数多くのドッグフードを批評し、集めたデータからドライフードの平均的な栄養素がタンパク質 約29%、脂肪 約16%、炭水化物 約50%だと分かっています。いぬわーんでは、このデータを使って批評に活用しています。(いぬわーん批評基準)
ドッグフードの原材料と成分を自分で確認することができれば獣医師でなくても、高品質で安全なドッグフードを選ぶことは難しくありません。

... 実はAAFCOの分析試験による栄養基準を満たす総合栄養食であっても全く問題ないとは言い切れないのがドッグフードの現状です。だからこそ今後、栄養基準がより明確化されてドッグフードの品質が今以上に向上していく事を願っています。
脚注
*1 「ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則」, (平成27年7月14日), 公正取引委員会,消費者庁 承認
*2 「ペットフードの表示に関する公正競争規約」, (平成28年11月22日), 公正取引委員会,消費者庁 告示第10号
*3 「ペットフードの表示について」, ペットフード公正取引協議会, 2019年7月30日閲覧
*4 「ペットフードの種類」, 一般社団法人ペットフード協会, 2019年7月30日閲覧
*5 「農林水産省 ペットフード安全法 表示に関するQ&A」, 農林水産省, 2019年6月26日閲覧
*6 2016 AAFCO Midyear Meeting Committee Reports, p42-43