大型犬は股関節形成不全になりやすいことが分かっています。
股関節形成不全は遺伝的要素と環境要素(育児性と栄養)が原因だと考えられています。[1]
- 遺伝的
- 急速な体重増加と肥満
- カロリー過剰摂取
- 骨盤の筋肉量
親犬または先祖に股関節形成不全の遺伝子がなければ犬は股関節形成不全になりません。
しかし、遺伝子を持っていれば股関節形成不全を発症することもしないこともあります。
股関節形成不全は一般的に小型犬では発症しません。[2,3]
股関節形成不全の遺伝子を持つ犬は正常に見える股関節で生まれますが、犬が成長して筋肉や骨格が発達するにつれて、関節の異常が現れます。
発症にはオス・メスの差はありません。[3]
大型犬の定義
米国飼料検査官協会(以下、AAFCO)では、大型犬は成人の体重が70ポンド以上(約31kg)になると予想される犬と定義されています。[3]
しかし、より保守的な考え方として50ポンド以上(約22kg)を大型犬の定義にすべきと主張する人もいます。[4]
いぬわーんではより保守的な50ポンド以上の定義に賛同します。
これは米国の大型犬の定義の話をしているように見えますが、日本のペットフード公正取引協議会はAAFCOの栄養基準を採用しているので「大型犬の定義」はそのまま日本にも当てはめて考えることができます。
ペットフード公正取引協議会では、総合栄養食を証明する基準として、世界的に認められた小動物の栄養基準となっているAAFCO(全米飼料検査官協会)の分析試験による栄養基準、または給与試験プロトコールを採用しています。[5]
大型犬はどの犬種が該当しますか?
大型犬はどの犬種が該当しますか?
ごめんなさい。大型犬の犬種一覧の作成はいぬわーんでは行っていません。
しかし、JKC(日本)を紹介します。JKCでは「遺伝性疾患の発生リスクが高いと考えられている犬種リスト」が掲載されています。
また、OFA(欧米)とJAHD(日本)も紹介します。これらは遺伝性疾患の犬を減らすための登録システムですが、別の使い方ができます。
それは遺伝性疾患の犬種別統計が掲載されているので、登録犬種を見れば大型犬の把握ができます。
日本で一般的に飼われている大型犬で股関節形成不全のリスクがあるのは以下の犬種が該当します。これはごく一部です。
- ラブラドールレトリーバー
- ゴールデンレトリーバー
- バーニーズマウンテンドッグ
- 秋田犬
- ジャーマンシェパード
- ニューファンドランド
発生率および重症度は遺伝的要素と環境要素の両方によって程度が決まります。
発症までには個体差があります。大型犬の子犬の股関節形成不全の症状はさまざまである可能性があり、症状が進行するまで一部の子犬はまったく症状を示さない場合があります。
しかし、一般的には生後4ヵ月から1年未満の成長期に骨と筋肉の発育に不均衡が生まれ、最終的に骨組織が変形して痛みがでるようになります。[1](成犬期に発症する場合もあります)
股関節形成不全の重症度を予防または軽減するためのヒント
大型犬の股関節形成不全の重症度を予防または軽減するのを助けるために、あなたが飼い主としてできることがあります。
大型犬の子犬は生後4ヵ月から1年未満の成長期に骨格が急成長するので、この時期に与えるドッグフードが股関節形成不全に大きな影響を与える可能性があります。
高カロリー・高カルシウムのドッグフードは子犬の体の成長を著しく早めて(急速な体重増加や肥満)、股関節形成不全を重症化させやすくします。
総合栄養食は、そのドッグフードが適応する成長段階が必ず表記されています。
そして、成長期に分類されるドッグフードは大型犬および大型犬の子犬のガイドラインを満たしているか明記するようになっています。
大型犬の子犬用のドッグフードはライフステージが「成長期」または「オールステージ」のいずれかが明記してあり、さらに「大型犬の成長を含む」と書いてあります。
子犬に適切な食事を与えることで股関節形成不全の主な要因である肥満を防ぐことができます。
あなたが食べ物以外で大型犬の子犬にしてあげられること
あなたは股関節形成不全の重症度を予防または軽減するのを助けるために食べ物以外にも飼い主としてできることがあります。
それは、次の2つです。
- 食事は自由採食法で与えてはいけない
- 激しい運動をさせてはいけない
1.食事は自由採食法で与えてはいけない
股関節形成不全は遺伝的要素と環境要素が原因だと考えられています。
環境要素として飼い主は急速な体重増加と肥満に注意しなければいけません。
そこで給餌のやり方として自由採食法で与えてはいけません。自由採食法とは、皿に餌を置いておき、いつでも食べられるようにしておくことです。
すべての犬に当て嵌りませんが、ほとんどの犬は皿に餌があれば胃に入るだけ食べようとします。
そうなると大型犬の子犬にとってカロリーの過剰摂取を招いてしまいます。
過剰なカロリー摂取は肥満の原因になります。それに成長期に食べすぎてカルシウムを過剰に摂取することも股関節形成不全の誘因となることが分かっています。[3]
食べ過ぎてしまう自由採食法は股関節形成不全の発症と重症度に深く関わりがあるのでおすすめできません。
ある研究では、このような結果が分かっています。[6]
1997年のラブラドールレトリーバーを使った研究では、生後8週の一腹の子の中で性別および体重に従って一組のペアを複数作り、そのうち一匹は自由採食法で飼育して、過剰栄養と股関節形成不全の関係性について調べた。
その結果、自由採食法で飼育された犬は同じ食物を与えられた一腹の子よりもはるかに高い股関節形成不全の割合がありました。
また、1992年の研究で48匹のラブラドールレトリーバーを2つにグループ分けして、片方のグループだけ2歳になるまで自由採食法で飼育したところ股関節形成異常がより多く発生しました。[7]
この2つ実験により自由採食法によるカロリー過剰摂取が股関節形成不全の発生率に関係しているのが明らかです。
そして適切なドッグフードと食事量を与えれば環境要因での股関節形成不全の予防または軽減するのを助けることになるので、あなたは大型犬の飼い主として責任を持って体重管理をしてあげるべきです。
2.激しい運動をさせてはいけない
大型犬の幼い頃に激しい運動をさせることは骨の形成異常を招く可能性があります。
人間でも同じです。スポーツ選手が激しい運動を繰り返すと軟骨が擦り減り、膝を悪くするのと一緒です。
激しい運動とは以下のような運動のことです。
- 急に走ったり、急に止まったりすること
- ジャンプしたり、高いところから飛び降りたりすること
- フローリングや大理石など滑りやすいところで生活させること
- 散歩で走らせること
お散歩でゆっくり歩かせることは適度な運動になり、幼い犬の筋肉量を維持する助けになります。お散歩は行いましょう。
幼い犬が毎日必要とする運動量(散歩の距離)については獣医に相談してください。
脚注
*1 日本動物遺伝病ネットワーク<JAHD Network>, 「股関節形成不全とは」, 2019年6月30日閲覧
*2 小型犬でも一部の犬種(パグ・ブルドック)では股関節形成不全が見られます。
*3 川瀬 清 「(11)大型犬における股関節形成不全症と栄養」, (2003年 6巻3号) p.138-144
*4 Deborah E. Linder, “Confused About What to Feed Your Large Breed Puppy? New Rules May Help!”, Clinical Nutrition Service, Cummings Veterinary Medical Center, Tufts University (February 24, 2017). 2019年6月30日閲覧
*5 ペットフード公正取引協議会, 「ペットフードの表示について」, 2019年6月30日閲覧
*6 PubMed Five-year longitudinal study on limited food consumption and development of osteoarthritis in coxofemoral joints of dogs, January 15, 1997, Vol. 210, No. 2, pp 222-225 2019年6月30日閲覧
*7 PubMed Effects of limited food consumption on the incidence of hip dysplasia in growing dogs, September 15, 1992, Vol.210, No.6, pp 857-63 2019年6月30日閲覧