アボ・ダーム ドッグフードはいぬわーんで高評価の4つ星を獲得しました。
評価:
アボ・ダーム ドッグフードは全部で10種類あります。以下はその10種類と評価をまとめた表になります。表の成長段階に書いてある記号はそれぞれの頭文字を取ったもので【G=子犬、M=成犬・老犬、A=オールステージ、U=不明】の意味があります。
また、ここでは10種類を代表してアボ・ダーム スモールブリードチキンを批評していきますが、他の種類の批評が見たい場合は表中の内部リンクを利用してください。
原材料とラベルの分析
ドッグフードを選ぶ際には原材料に書かれた上から最初の10品目を見てください。
原材料の表示は原則、重量順です。つまり、最初に書いてあるものがもっとも含有量が多いのです。
原材料:チキンミール、玄米、白米、オートミール、鶏脂肪、ビートパルプ、アボカド、トマト繊維、ナチュラルフレーバー、アルファルファミール、亜麻仁、ニシンミール、チコリー根、卵、塩化カリウム、塩、海藻、アボカドオイル、ビタミン(塩化コリン、ビタミンE、ビタミンC、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸カルシウム、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンD3、葉酸)、ミネラル(硫酸亜鉛、硫酸鉄、鉄アミノ酸キレート、亜鉛アミノ酸キレート、セレニウム酵母、銅アミノ酸キレート、硫酸銅、硫酸マンガン、マンガンアミノ酸キレート、ヨウ素酸カルシウム)、ローズマリーエキス、セージエキス、パイナップル、乳酸菌(ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム、エンテロコッカス・フェシウム)
赤字は物議をかもします。
粗灰分=8.2%以下, 粗繊維=3.5%以下 (推定乾物繊維量=3.9%), 水分=10%以下
測定方法 | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 |
保証分析値 | 26% | 16% | NA |
乾物基準 | 28.8% | 17.8% | 44.2% |
熱量基準 | 25.7% | 38.4% | 35.8% |
このドッグフードの最初の原材料はチキンミールです。
アボダームは日本語の公式サイトがありません。そのため代理店のWebサイトから原材料を確認したのですが、表記が代理店によってところどころ違います。
最初の原材料はチキンミールとなっていますが、代理店によっては乾燥チキンにしているところもあります。英語の公式サイトで確認してきたところチキンミールが使われていました。
乾燥チキンは鶏肉を低温乾燥させたもので、チキンミールは肉や骨を加熱して溶け出した脂肪分を取り除いてから乾燥粉末にしたものです。これらはまったく違うものです。
このフードの動物性タンパク質はチキンミールだけですね(ニシンミールも入っていますが少ない)。合成アミノ酸も入っていません。これは必須アミノ酸のバランスを考えると問題がある気がします。
高温調理でミールを製造するとアミノ酸バランスが変化するのでチキンミールのみでタンパク質を摂取すると考えるとメチオニン+シスチンとトリプトファンが足りません。また、メイラード反応によってタンパク質の消化率が低下する可能性が考えられます。
通常だと必須アミノ酸を補うために合成アミノ酸が追加されるか、複数のタンパク質源を併用することが多いです。でも、このフードはどちらもしていません。大丈夫なのでしょうか?
2番目と3番目の原材料は玄米、白米です。
玄米と白米は英語の公式サイトでは ”Ground Brown Rice, Ground White Rice” と書かれているのでグラウンドライス(挽いた米)ですね。
ちなみにアメリカの表記では挽いた米と割れた米(屑米)は区別して書くようになっています。
玄米を精米して米糠を削ったものが白米です。公式サイトでは米糠もビートパルプとアボカドの間に入っていましたが、日本の代理店に書いてある原材料だとなぜか書いてないですね。んーなぜだろう。
玄米は栄養価の高い全粒穀物ですが、消化しにくい欠点があります。しかし、挽いた状態で入っているならば欠点が解消されていますね。白米は消化しやすい穀物で主に炭水化物源です。
4番目の原材料はオートミールです。
オーツ麦を脱穀して調理しやすく加工したものですね。栄養価の高い低GI食品でグルテンを含まず、食物繊維(β-グルカン)が豊富です。
5番目の原材料は鶏脂肪です。
鶏脂はオメガ6脂肪酸(リノール酸)の供給源です。一般的にチキンミールの製造工程(レンダリング加工)で抽出された油が使われます。
6番目の原材料はビートパルプです。
ビート(甜菜)パルプ(繊維)は甜菜の食物繊維のことです。甜菜から砂糖を作るときに搾って残ったカスが食物繊維として再利用されています。
食物繊維は一般的にかさ増しです。繊維源として考えるとビートパルプは賛否両論です。それは残留薬物の問題があるからです。砂糖の抽出方法で安価なやり方だと硫酸系の薬物を使うので問題視されています。ただ、甜菜を押しつぶすように圧力をかけて砂糖を抽出する安全な方法もあるので賛否両論になっています。
フードによってはビートパルプに薬物を使っていないと公言しているところもあります。(アボダームは書いてないですけど)
ここではビートパルプに賛否両論があることを伝えるだけで適度な量であれば許容できる食材とします。
7番目の原材料はアボカドです。
アボカドは物議をかもします。それはアボカドに含まれるペルシンと呼ばれる物質が特定の動物に毒性があることに関係しています。[1,2]
しかし、アボダームでは1982年からアボカド入りのドッグフードを販売しており、その長い販売実績からアボダームで使われるアボカドは犬に対して安全であると考えます。[3] 物議をかもす赤字にしていますが、評価に悪影響を与える食材と見なしていません。
また、原材料の下のほうにアボカドオイルも入っています。こちらも同様にペルシンが含まれているので物議をかもします。
アボカドオイルは殆どがオレイン酸でオリーブオイルと似た脂肪酸の構成をしています。オメガ3脂肪酸も含んでいますが、植物からとれるオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)は既成のEPA,DHAに比べると利用されにくいことが指摘されています。
それはEPA,DHAが直接取り込まれるのに対してα-リノレン酸は体内でEPA,DHAに変換してから取り込まれるためです。変換にはロスがあります。
8番目の原材料はトマト繊維です。
トマト製品を作った際に残った繊維物の再利用ですね。トマト繊維には水溶性と不溶性の食物繊維がバランス良く含まれています。食物繊維は一般的にかさ増しです。ただ、繊維源としてみたら悪くない選択肢です。
9番目の原材料はナチュラルフレーバーです。
これは所謂、加水分解タンパクのことですね。うま味調味料として使われています。
本来、肉や魚で魅力的な風味があれば不要なものですが、このフードには動物性タンパク質としてチキンミールしか含まれていないので食いつきを考えて入れたのかな?と思います。(ニシンミールも含まれるが少ない)
10番目の原材料はアルファルファミールです。
アルファルファを乾燥させたものですね。アルファルファは日本ではムラサキウマゴヤシと呼ばれるものです。栄養豊富(ミネラル、ビタミン、タンパク質源)で栄養補助食として利用されます。ウマゴヤシ(馬肥やし)の名前から分かるように馬の飼料としてよく見かけます。
ここまで原材料をリストの上から順番に見てきました。この製品には他にも多くの原材料が含まれていますが、これよりも下に位置する原材料は評価に影響を与えそうにありません。
ただし、8つの例外があります。
まず、亜麻仁です。
亜麻仁は植物性の中でもっともオメガ3脂肪酸が豊富で供給源として利用されます。しかし、亜麻仁のオメガ3脂肪酸はα-リノレン酸なので体内でEPAやDHAに変換してから利用されます。
次に、ニシンミールです。
ニシンミールはニシンで作られた魚粉のことです。ニシンは青魚で脂肪の多い魚ですが、ニシンミールの製造工程(レンダリング加工)で脂肪分が取り除かれるのでオメガ3脂肪酸の供給源としては乏しいです。
次に、チコリー根です。
チコリの根はハーブの一種でイヌリンと呼ばれる難消化性の水溶性食物繊維を含んでいます。原材料の最後に乳酸菌がありますよね。この乳酸菌の栄養源として大腸内で活用されます。
次に、卵です。
英語の公式サイトでは "Dried Egg Product" と書かれていました。乾燥させて粉末にした全卵です。
乾燥粉末状なので長期保存が可能でフードに加工しやすい特徴があります。使いやすいので製造業者に好まれています。
次に、塩です。
塩は「ドッグフードに必要ない」と言われることが多いですが、そうではありません。
塩の必須ミネラルは犬にとって人間よりも必要量が少ないだけで必要不可欠な栄養素です。適量であれば問題ありません。
次に、ミネラル類です。
ミネラル(硫酸亜鉛、硫酸鉄、鉄アミノ酸キレート、亜鉛アミノ酸キレート、セレニウム酵母、銅アミノ酸キレート、硫酸銅、硫酸マンガン、マンガンアミノ酸キレート、ヨウ素酸カルシウム)
ミネラルの加工方法も書いてくれていますね。亜鉛、鉄...とただ単に元素の名前を並べているだけではなく、硫酸亜鉛、硫酸鉄...と書いてくれているので情報開示の点で良心的ですね。
さらに微量必須ミネラルはキレート加工されています。身体に吸収されやすいキレートミネラルは非キレートよりも5倍以上高価になるので高品質のドッグフードでよく見かけます。
次に、ローズマリーエキス、セージエキス、パイナップルです。
ローズマリーとセーズのエキスは抗酸化作用と抗菌特性があります。天然の酸化防止剤といったものでしょうか。特にローズマリーエキスはBHA,BHTに匹敵するほど強い抗酸化作用を持っています。
パイナップルはフルーツとしてビタミンC等を目的というより、ブロメラインと呼ばれるタンパク質分解酵素を目的として追加されていると考えられます。酢豚でお肉を柔らかくするのにパイナップルがよく使われていますよね。
ブロメラインは胃液の分泌を活発にし、消化吸収を助ける働きや抗炎症作用があります。ただ、パイナップルが少量なので効果を発揮するのに十分な量とは言えないかもしれません。
最後に、乳酸菌です。
ラクトバチルス・アシドフィルスなどのさまざまな乳酸菌が原材料の最後にありましたね。これは人体に良い影響を与える微生物(善玉菌)です。
菌の種類や組み合わせによって効果が異なりますが、基本的にはヨーグルトと同じでお腹の調子を整えてくれるものと思って構いません。
このような作用がある微生物は ”プロバイオティクス” と呼ばれています。
アボ・ダーム ドッグフードの特徴
- 犬に毒性があるアボカド、アボカドオイルを使用。1982年から発売で中毒症状の報告例なし。
- 製造工場はカリフォルニア州ロサンゼルス群近郊のアーウィンデールにあります。
- 製造工場の品質システムはSQF(セーフ・クオリティ・フード)レベル3に準拠しています。
- 製造現場の監督者と品質保証チームはPCQI(予防管理有資格者)を有しており、食品安全近代化法(FSMA)の訓練を受けています。
- 製造工場はHARPCベースの品質管理プログラムによって食品安全基準を満たすように常に監視しています。
- すべてのパッケージ製品が適切な仕様で製造されていることを確認するため定期的に製造中の製品を収集しています。
- 原材料は近赤外線でタンパク質、脂肪、水分、繊維、灰分を測定して保証値通りの製品が受け取れるようにしています。
- 長年のペットフードテストの経験を持つ微生物学者や化学者がおり、日常的な微生物検査ではサルモネラ菌、大腸菌、リステリア菌を検査しています。
- 汚染物質検査ではメラミン、シアヌル酸、ビタミンB群、ビタミンD、またはその他の必要な分析物を検査しています。
- 製造前にすべての成分がテストされ、完成品は品質テストを合格するまで一時保留されます。
- 原材料の生産者、農場、牧場、漁業、および納品業者(サプライヤー)の定期検査を実施しています。
- 原材料は直接調達するように努めており、公開市場で購入することはありません。
- 原材料は米国および海外から仕入れています。詳細は非公開です。
参照:https://avodermnatural.com/
成分と肉含有量の分析
アボ・ダーム スモールブリードチキンは原材料だけで判断すると平均以上のドッグフードに見えます。
しかし、原材料の品質だけではなく、成分 (タンパク質・脂質・炭水化物) と肉の含有量も評価を下すために重要です。
ラベルの分析で乾物基準はタンパク質が29%、脂質が18%、推定炭水化物が44%と判明しました。
脂質とタンパク質の比率は約62%です。
一般的な成犬向けのドライフードと比較するとタンパク質は平均以上、脂質は平均以上、炭水化物は平均以下。
タンパク質を増加させる植物性食品はアルファルファミールと亜麻仁だけです。このドッグフードは適度な量の肉を含んでいるように見えます。
最終評価
アボ・ダーム スモールブリードチキンは動物性タンパク質の供給源として適度な量のチキンミールを使用した穀物を含むドライフードです。星5の評価を下しました。
アボダームは日本公式サイトがありません。その代わり複数の代理店を見つけました。しかし、代理店によってドッグフードの原材料と成分が違います。おそらく情報の更新が滞っているのだろうと思います。英語の公式サイトと照らし合わせながら批評を行うことになりました。
こういうことがあるから日本公式サイトがほしいですよね。代理店だと商品概要だけで、その商品に関する情報は一切載せていない場合もありますから。
アボダームの英語公式サイトを見ると製品概要とアボカドの情報のみ。アボカドがいかに素晴らしいのか、いかに安全なのかについての説明しかありません。どこのサイトにもあるようなよくある質問だったり、アボカド以外の原材料についてだったり、製造工場について言及したり、色んなことの説明があったほうがいいのに一切ありません。
情報が無さすぎないかと思ったら製造工場と原材料についてはアボダームの公式ではなく、製造元のBreeder's Choice PetFoods社のサイトに書いてありました。(Breeder's Choice PetFoodsがアボダームを製造・販売している)
調べていると製造工場は品質管理が素晴らしいのは分かったのですが、原材料がどこから仕入れているのか分かりません。”国内または海外から”としか書いていません。書いてあったほうが安心できますよね。ちょっと残念です。
アボダームの製品はすべてアボカドを使っています。アボカドの成分(脂肪と抗酸化物質)が皮膚や被毛を美しくします。でも、ASPCAではアボカドは危険だと判断しています。しかし、アボダームは犬に有毒となる部分を使っていないので安全だと主張しています。(アボダーム製品のアボカドとアボカドオイルはアボカドの肉に由来し、毒性がある品種及び葉、樹皮、種などの部位は含まれていません。)
どちらがが正しいのか分かりませんが、1982年に発売してから今までアボカドの中毒症状になった、と症例がないので、このフードは安全なのでしょう。ただ、アボカド自体は危険だと言われているので、このフードを ”おすすめします” とは言いません。
他にもアボダームで気になったのは製品の中に動物性タンパク質がチキンミールのみのものがあります。ここで批評しているスモールブリードチキンもそうですよね。原材料に追加で合成アミノ酸を足していないのでメチオニン+シスチンとトリプトファンが欠乏しないか心配です。
また、アボダームの製品はすべてメインのタンパク質がミールです。ミールの品質は製造業者に依存します。日本はアメリカと法律が違うので例えばチキンミールをアメリカで製造していても日本の規格に合わせればいいので鶏副産物ミールをチキンミールと表示することが可能です。(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律でラベル表示の定義に関する法律がない。)
ミールの良し悪しを見分けるのは難しいです。以下のような事柄で見分けるしかありません。
- 独自の日本公式サイトを持っており、副産物不使用または人間用食品基準の表記がある
- キロあたりの値段を確認する(値段と肉含有量は比例する)
- 海外公式と日本公式の原材料表示とカロリーを確認する(原材料の表示を偽装してもカロリーは偽れない)
2,はクリア。3,のカロリーもクリア。原材料の表示は代理店によって違うので何とも言えません。総合するとミールの品質はおそらく大丈夫かな?といった印象です。
アボダームは犬に毒性があると言われているアボカドを使った特殊なフードです。原材料はシンプルで特別指摘したくなるようなものは入っていません。ハーブも酸化防止を目的としたもの以外は入っていないので自分でカスタマイズしやすい作りになっていると思います。製品はおすすめできます。ただ、日本公式サイトがないし、代理店の情報更新も滞っているので日本で買うのはどうなんだろうと少し思うところがあります。
グレインフリーと心臓病の潜在的な関係性
アメリカ食品医薬品局 (FDA) は2019年6月27日にグレインフリー (穀物を含まない) と拡張型心筋症との潜在的な関係について3回目の調査状況を発表しました。
詳しくは「FDAがグレインフリーと心臓病との潜在的な関連性を調査対象にする」をご覧ください。
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そしてドッグフードの批評を行う際に金銭的な誘惑によって評価を下すことなく、公平かつ偏りのない判断を下すことにも繋がっています。
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脚注
*1 FDA, Potentially Dangerous Items for Your Pet
*2 ASPCA, Avocado
*3 Avo Drem, WHY AVOCADOS?